相続で困った場合の相談先
相続で困った場合には、どのような弁護士に相談すれば良いのでしょうか?
相談先となる弁護士を選ぶ際のポイントとしては、以下のようなものがあると思います。
1 当事者の意向を丁寧に確認することができること
相続の当事者は、親族同士であり、無関係の第三者ではありません。
親族間の問題は、損得だけの問題に収まらないことが多く、様々な感情が入り組んだ問題となっていることが多いです。
また、相続に際しては、誰がどの財産を取得するかということだけでなく、今後の先祖代々の祭祀を誰が行うか、引き継いだ財産の管理を今後どのように行うか等、関連する様々な問題が生じてくることも多いです。
このような、様々な感情が入り組み、かつ、関連する問題が多い相続の問題を解決するためには、損得だけでなく、当事者の意向を丁寧に確認する必要があります。
ところが、弁護士は、自分の専門分野との関係で、得か損かということだけしか聞き取らず、限られた問題だけ対応するといった行動に陥りがちです。
先述の相続問題の性質を踏まえると、こうした対応は、当事者にとって、納得感のある解決にはならないことがあります。
たとえば、相続人本人が、公平性のある解決を希望しているにもかかわらず、弁護士が、早期解決を強調し、公平感のない解決で合意することを強く勧めるといった行動をとることは、当事者にとって納得感のある解決にはなり難いでしょう。
相続では、当事者の意向を丁寧に確認し、納得感のある解決を導き出すことが望まれます。
2 様々な事情を踏まえた納得感のある提案ができること
相続の問題を解決するには、最終的には、弁護士が納得感のある解決を提案する必要があります。
こうした納得感のある提案を行うためには、様々な解決策をシミュレーションし、その中から、最も当事者の意向に沿う解決方法を選び出す力が必要になってきます。
たとえば、不動産を売却する方法1つをとっても、特定の相続人が不動産を取得し、その相続人が不動産を売却する相続の方法もあれば、すべての相続人が共同で不動産を売却する相続の方法もあります。
特定の相続人が不動産を取得して売却する相続の方法では、その相続人が今後の不動産の経費、税金等を負担することとなる一方、不動産が高値で売れた場合の利益も得ることとなります。
すべての相続人が共同で不動産を売却する相続の方法では、負担も利益も公平に分担することとなるでしょう。もっとも、不動産の売却手続が完了し、売却代金を分割するまでに、かなりの時間(場合によっては年単位の時間)を要することもあります。
どちらの相続の方法が適切であるかは、各当事者の希望によって異なってきます。
このように、相続では、様々な解決方法をシミュレーションし、どの解決方法が適切かを選び出す力が必要になってきます。
3 相続で困った場合の相談先の選び方
相続を中心に扱っている弁護士であれば、上記でご説明したようなご提案をすることが可能です。
相談先を選ぶ際には、以上のようなポイントを参考にしていただけましたらと思います。
不動産に強い弁護士に相談すべき理由
1 相続問題における不動産の重要性
相続問題では、不動産の問題にどのように対処するかが重要になってきます。
ここでは、相続財産に不動産が含まれている場合に、どのような問題が生じてくるかを説明したいと思います。
以下では、特定の相続人が不動産を取得する場合と、不動産を売却し、売却代金を分割する場合に分けて、説明を行いたいと思います。
2 特定の相続人が不動産を取得する場合
特定の相続人が不動産を取得する場合には、遺産分割協議書を作成し、不動産の名義変更を行う必要があります。
不動産の名義変更を行う際には、法務局において、登記申請を行う必要があります。
登記申請を行う場合には、必ず、定まったルールに基づいて、登記申請書等の書類を作成する必要があります。
わずかな文言の違いでも、登記申請が受理されず、書類を作成し直す必要が出てくることもあります。
このような場合には、再度、各相続人に連絡を取り、各相続人の押印を得るといった作業をし直さなければならないといった事態が生じることもあり得ます。
また、登記申請を行う場合には、必ず、提出しなければならない書類があります。
たとえば、相続人が複数の場合は、すべての相続人の印鑑証明書が必要になってきます。
このような書類が1つでも欠けていると、登記申請は受理されず、いつまでも不動産の名義変更を行うことができなくなってしまいます。
このように、確実に名義変更を行うためにも、不動産に強い弁護士に相談すべきであることが分かります。
3 不動産を売却し、売却代金を分割する場合
不動産を売却し、売却代金を分割する場合にも、不動産を相続人の名義に変更し、その後、買受人に名義変更する必要があります。
この場合も、法務局において、登記申請を行うことが必要不可欠になってきます。
不動産を売却する場合には、宅建業者とのやり取りを行う必要があります。
この場面では、宅建業者に対し、不動産についての正確な情報を提供する必要が出てきます。
また、宅建業者と協議し、いくらで、どのような条件で不動産を売却するかについて、条件を詰める必要があります。
弁護士が依頼を受けている場合には、弁護士が、宅建業者とのやり取りを行うことがしばしばあります。
このような場面においても、不動産について、ある程度の知識を持っている弁護士に相談するのが望ましいと言えます。
弁護士と各専門家が協力できることの強み
1 各専門家と協力することの必要性
弁護士は、必ずしも、他の専門家の分野について、詳しい知識をもっているわけではありません。
相続では、他の分野と比較しても、他の専門家の分野と密接に関連する部分が多く、弁護士が各専門家と協力する必要性が大きいです。
こうした協力が不十分だと、思わぬ不利益が生じかねません。
ここでは、他の専門家との協力が不十分だった例を説明し、弁護士が他の専門家と協力することの重要性を説明したいと思います。
2 他の専門家との協力が不十分だった例
この事例では、多額の相続財産が存在したため、相続税の課税対象になっていました。
ところが、相続人間の意見対立が激しかったため、申告期限までに相続財産の分割方法についての合意を行うことができませんでした。
そこで、申告期限の段階では、未分割での申告を行い、申告と納付がなされました。
この場合、申告期限の段階では、小規模宅地等の特例を用いることができませんので、3年以内分割見込書を提出し、後日、相続財産の分割方法についての合意が成立した後、小規模宅地等の特例を適用して更正の請求を行い、税金の還付を行う予定となりました。
小規模宅地等の特例を適用できる土地は1つだけであり、その土地を自分が取得すること予定ので、適切に更正の請求の手続を行いさえすれば、税金の還付を受けることができるはずでした。
その後、弁護士が他の相続人との協議を重ね、相続財産の分割方法についての合意が成立する運びとなりました。
予定どおり、小規模宅地等の特例を適用し得る唯一の土地については、自分が取得することとなりました。
その後、合意が成立して半年が経過した後、税理士に更正の請求を依頼しました。
ところが、税理士からは、更正の請求を行うことはできないとの回答がなされました。
税理士によると、更正の請求の期限は、合意が成立してから4か月以内になり、すでに更正の請求の期限が経過してしまっているので、更正の請求を行うことはできないとのことでした。
このような事態を避ける対策は、弁護士と税理士が連携し、あらかじめ更正の請求の4か月の期限についての情報を共有しておくことか、合意成立直後に弁護士から税理士に合意が成立したとの連絡を行うことであったと思います。
こうした事例からも、弁護士と各専門家が協力することがいかに重要か確認できると思います。
3 当法人の体制
当法人は、グループの各専門家が連携し、相続の問題に対処する体制を作っています。
相続の問題でお困りのことがありましたら、当法人までお問い合わせください。
相続を依頼する場合の弁護士の選び方
弁護士に依頼する場面は、それ程多くないと思います。
いざ、弁護士に相続の件を依頼するとなると、どの弁護士に依頼するのが良いのかは、分かりにくいところだと思います。
ここでは、相続を依頼する弁護士を選ぶ場合の判断材料について、まとめたいと思います。
1 相続に関する法的問題を網羅的に把握していること
相続に関する法的問題は、多種多様です。
相続は、相続分を計算し、相続財産総額にかけ算すれば良いという、単純な問題ではありません。
たとえば、相続財産に不動産が含まれている場合は、不動産の評価を行う必要があります。
その際には、固定資産評価額を用いるのか、相続税申告の際の評価額を用いるのか、査定価格を用いるのか、私的に不動産鑑定士に鑑定評価を依頼するのか等が問題になります。
また、土地上に建物が存在する場合には、現状のままでの評価を行うのか、建物を取り壊す前提での評価を行うのか等も問題になります。
弁護士として活動する以上、これらの事項については、書面作成や交渉の場面ですぐに使える情報になっていることが望まれます。
時間をかけて調べれば分かる事項にとどまっているのであれば、弁護士が、これらの情報を、書面作成や交渉の場面で、適時に利用できないおそれもあります。
2 調査能力があること
相続の問題は、一番情報をもっているはずの被相続人が亡くなっていますので、残された断片的情報を手がかりに、調査を行う必要があることが多いです。
このように、断片的情報に基づく調査が可能であるかどうかによって、必要となる情報がどこまで得られるかが、大きく異なってきます。
たとえば、特定の相続人が、被相続人の相続について、相続時精算課税の申告を行っていたとの情報があったとします。
このような情報からは、その特定の相続人が、被相続人からまとまった生前贈与を受けていたことが推定されます。
このような場合は、その特定の相続人に特別受益があり、その相続人の取得財産額を減額調整すべきかどうかについて、検討を行う必要が生じてきます。
このため、たとえば、相続税の申告書の記載内容を検証し、贈与された財産の評価額を特定できるかどうかを確認する必要も生じてきます。
このように、相続の問題では、弁護士が、断片的な情報から、どこまで、必要な調査を尽くすことができるかどうかが勝負になってくることがあります。
弁護士がこのような調査を尽くせるかどうかは、相続財産を漏らすことなく把握することができるか、交渉上有利になる事情を見つけ出すことができるかどうかにも、影響してきます。
3 相続を依頼する場合の弁護士の選び方
相続を依頼する場合には、以上で述べた条件を満たす弁護士に依頼されることをお勧めします。
この点は、依頼する弁護士を選ぶに当たり、参考にしていただけましたらと思います。
不動産の売却を予定している場合,弁護士はどのような遺産分割を行うのでしょうか?
1 不動産の売却を予定している場合
相続した不動産について,相続人が誰も使用していない等の理由により,第三者への売却がなされることがあります。
このように,第三者への売却を予定している場合には,遺産分割は,どのように行うのが良いのでしょうか?
以下では,このような場合に用いられる遺産分割について,複数の方法を説明したいと思います。
2 換価分割の方法を用いる場合
第一に,相続人が共有しているままの状態で不動産を売却し,売却代金を相続人間で分割する方法があります。
これを換価分割といいます。
換価分割については,不動産の売却代金を相続分等によって分割する反面,不動産の売却に要する経費,不動産の売却により発生する税金を相続分等によって分担することができます。
不動産の売却に要する費用としては,不動産業者へ支払う仲介手数料,土地の測量費用,建物の取壊費用等があります。
不動産の売却により発生する税金としては,譲渡益に課税される所得税,住民税等があります。
基本的には,これらの経費,税金を売却代金と同じ割合で分担しますので,相続人間の公平感の高い遺産分割方法であるという点でメリットがあります。
一方で,換価分割については,相続人全員が,売買契約書に実印を押印し,3か月以内の印鑑証明書を提供しなければ,売却の手続を進めることができないという問題があります。
このため,相続人の中に協力的ではない人がいる場合には,売却の手続が進まず,違約金を支払わなければならなくなるおそれがあるという点でデメリットがあります。
3 代償分割の方法を用いる場合
第二に,特定の相続人が不動産を取得し,その相続人が不動産を売却して売却代金を取得することとする代わりに,その他の相続人に対して代償金を支払うこととする方法があります。
これを代償分割といいます。
代償分割については,不動産を取得した特定の相続人が売却の手続を行うこととなり,売却の手続に際してその他の相続人の協力を得る必要がないこととなります。
このように,単独で売却の手続を進めることができ,売却の手続を進めることができる確実性が高まるという点において,メリットがあります。
一方で,代償分割の場合は,売却に要する経費,売却により発生する税金については,不動産を取得した特定の相続人が単独で負担することとなります。
また,不動産の購入を予定していた人が融資を受けることができなかった等の理由により,売却が途中でキャンセルとなった場合には,不動産を取得した特定の相続人において,別の購入予定者を探さなければならなくなるリスクもあります。
このように, 不動産を取得した特定の相続人が経済的負担,リスクを負うこととなる点において,相続人間の不公平感が生じる可能性があるというデメリットがあります。